「長引く咳」でお困りの方へ

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「風邪が治ったのに咳だけが続いている」
「仕事でしゃべると咳が出て困っている」
「夜中に咳が出て、なかなか眠れない」

このような 「長引く咳」 でお悩みの方は多いのではないでしょうか。咳は体の防御反応として重要な役割を果たしますが、長期間続くと日常生活に大きな支障をきたし、不安を感じることも多いでしょう。

院長は15年以上にわたり、長引く咳の患者さんの診断、治療にあたってきました。また長引く咳の研究を行い、学会発表も行いました。咳の原因を問診、聴診、検査から診断し、最善と考えられる治療を行います。風邪と思っていた咳が、実は喘息や肺の病気が原因であることも少なくありません。初回の治療薬で改善が得られない場合もありますが、2回目3回目も当院で診療させて頂きたいと思います。症状がゼロになるまで、当院で責任を持って治療させてください。

咳の役割と「長引く咳」とは?

咳は、気道(のど・気管・肺)に入った異物やウイルスを排除するための防御反応です。例えば、風邪をひいたときに咳が出るのは、ウイルスや細菌を体の外に出そうとするためです。通常、風邪の咳は1~2週間で治まります。

しかし、3週間以上続く咳は「遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう)」、8週間以上続く咳は「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼ばれ、風邪とは異なる病気の可能性が高くなります。咳が長引く原因は様々であり、適切な検査、診断が必要です。

長引く咳の検査

長引く咳の原因を調べるにあたり、問診が最も重要です。具体的には咳の続いている期間、出やすい時間帯、痰の有無などを詳しく伺います。問診や聴診の結果を踏まえて、下記のような検査を行います。

胸部レントゲン検査
肺炎や肺結核、肺がんの可能性をチェックします。
呼吸機能検査
喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)が疑われる場合に行います。
呼気一酸化窒素検査
吐いた息に含まれる一酸化窒素を測定するもので、空気の通り道の炎症の有無をみます。
抗原検査
インフルエンザやコロナでお馴染みの検査です。マイコプラズマが疑われる場合はのどで採取します。15分程度で結果が分かります。
血液検査
百日咳が疑われる場合、アレルギーが疑われる場合に行います。

長引く咳を引き起こす可能性のある疾患

長引く咳の原因には、気管支や肺の病気はもちろんですが、アレルギーや消化器の病気も関係することがあります。主な疾患としては、以下のようなものがあります。

気管支喘息、咳喘息

8週間以上続く慢性咳嗽では原因の半分以上を占めます。気管支喘息では息を吐くときに喘鳴と呼ばれる「ヒュー」という音がして、呼吸機能検査で息の吐きにくさが認められます。咳喘息では喘鳴がなく咳が主体ですが、風邪の後に咳が長引くことを繰り返します。いずれも吸入薬が治療の基本となりますが、咳喘息から気管支喘息に移行する場合があります。
気管支喘息

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

喫煙歴があって咳が続く場合、慢性閉塞性肺疾患が疑われます。気管支喘息と一緒に起こる場合もあります。

百日咳

百日咳は百日咳菌による細菌感染症で、小児では「ヒュー」という音を伴う咳発作が特徴的です。成人では他の病気で生じる咳との区別は困難です。小児期に接種する4種混合、5種混合ワクチンで予防可能ですが、小学校高学年になるとその効果が薄れてしまいます。飛沫感染で広がるため、乳児のいる家庭では注意が必要です。
発症から4週間以内の場合はインフルエンザと同様の抗原検査、4週間以降の場合は血液検査で診断します。治療薬はマクロライド系の抗菌薬です。

マイコプラズマ感染症

マイコプラズマ感染症は肺炎マイコプラズマが原因の細菌感染症で、数年に1回流行が見られます。飛沫感染で広がり、不顕性感染(感染しても症状がないこと)や風邪症状のみで自然に治ることもあります。一部の方では急性気管支炎から肺炎に至り、学童から若年成人の肺炎の原因菌として知られています。
抗原検査で診断しますが、偽陰性が多い(陰性だからマイコプラズマではないと言い切れない)のが難点です。実際には流行状況、問診、聴診、胸部レントゲンでの肺炎の有無などから判断し、抗菌薬で治療します。マクロライド系抗菌薬で最初に治療しますが、東アジアで抗菌薬が効きにくい菌が増えており、改善が乏しい場合はテトラサイクリン系、キノロン系抗菌薬に切り替えます。

アトピー咳嗽

アレルギー素因のある方で、のどの違和感、イガイガ感から咳が出やすくなります。比較的根元に近い気管支の咳受容体の感受性が亢進している(会話や冷気などわずかな刺激でも咳が出る)ことが特徴で、気管支喘息で使用される気管支拡張薬が効きません。アレルギー疾患に用いられる抗ヒスタミン薬を使用しますが、やや眠気を伴う古いタイプの薬でないと効果が乏しいです。

肺炎や肺結核

咳や痰が長引いている場合、必ず胸部レントゲン検査を行います。肺炎、肺結核、肺がん、間質性肺炎などは咳をきっかけとした検査で見つかる場合もあります。

逆流性食道炎

胃酸が食道に逆流し、のどを刺激することで咳が続きます。8週間以上続く慢性咳嗽では原因の約10%を占めます。食後や横になると咳が出やすくなるのが特徴です。胃酸を抑える胃薬で治療します。

副鼻腔炎(後鼻漏)

いわゆる蓄膿症で、鼻水がのどに流れ込むことで咳が続きます。鼻からのど、気管から肺は空気の通り道として繋がっています。長年患っていると肺にも気管支拡張症を生じることがあります。耳鼻咽喉科と連携して治療を行います。

治療について

長引く咳の治療は原因によって異なりますが、初回の診察で原因が絞れない場合はそれぞれの病気に有効な治療を組み合わせる場合があります。気管支喘息、咳喘息、気道の炎症が強い方では吸入ステロイド薬、喫煙歴がある方では気管支拡張薬、アレルギーが疑われる方では抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン拮抗薬を使用します。咳止めと言っても様々な種類があり、漢方薬をお勧めする場合もあります。
当院を受診する前に他の医療機関を受診された方は、お薬手帳など処方が分かるものを持参ください。どのような薬を使用して効果があったのか、なかったのか、過去にどのような時期に咳で治療を受けていたのか参考になります。