気管支喘息とは

気管支喘息はのどから肺につながる空気の通り道、気管支に炎症が起こり狭くなる病気です。息を吐くときに喘鳴(ぜんめい)と呼ばれるヒューっという音がするのが特徴です。喘鳴がなく、咳、痰、息切れの症状で病気が分かることもあります。小児ではダニ、ハウスダスト、カビなどに対するアレルギーが原因となっている場合が多いですが、成人では半数近くがアレルギーに関係しない喘息と言われています。
日本の成人における喘息の有病率は10%前後と言われていますが、病気と思っていなかったり、治療を受けることを我慢していたりして、高血圧症、高脂血症など他の慢性疾患と比べて病院に通っている方は少ないです。
小児喘息から引き続いて大人の喘息になる方もいますが、70~80%は大人になってから発症します。発症年齢のピークは40歳代ですが、高齢で初めて喘息と診断される方もいます。
気管支喘息の症状
気管支喘息の症状は体内時計、ホルモンの関係で夕方から寝る前、明け方に出やすくなります。ヒューっという喘鳴、咳、痰、息切れが代表的な症状ですが、胸の圧迫感、胸の痛みが出ることもあります。
気候やストレスなどで、いい日、悪い日があるのも喘息の特徴です。長くこの病気を患っていると、調子が悪い日があることはしょうがないと思うようになってしまいますが、喘息治療の目標は限りなく症状をゼロにすることです。診察室では昨日、1週間前、1カ月前のことを教えて欲しいと思います。喘息日誌をつけてもらうことも提案しています。ご自身の症状の変化や悪くなる要因を見つけること、そして治療薬の調整に役立ちます。
喘鳴、咳がなかなか治まらず、動くこともままならない状態を発作と言います。手元に即効性の気管支拡張薬、メプチンエア®、サルタノール®があればまず吸入してください。そして、当院もしくは医療機関を受診してください。発作の重症度に応じて気管支拡張薬のネブライザー、全身性ステロイドの点滴、内服で治療します。
気管支喘息の進行
気管支喘息は空気の通り道が狭くなる病気ですが、可逆性(良くなったり悪くなったり)があります。しかしながら、調子が悪いときだけ治療を受ける、原因となるアレルゲンの対策をしない、喫煙を続けるなどしていると、狭くなった通り道が戻りにくくなってしまいます。この状態はリモデリングと呼ばれ、症状としては息切れに繋がります。喘息で治療を受ける場合は、定期的に呼吸機能検査を実施し、息を吐く力が落ちてきていないか確認します。リモデリングになってしまった状態でも、気管支拡張薬を組み合わせた治療や抗体薬の注射の治療で回復が得られる場合があります。
気管支喘息の治療
気管支喘息の治療の目標は、発作を起こさないこと、症状を限りなくゼロにすることです。治療の主体は他の病気ではあまり使われない、吸入薬(口から薬剤を吸い込む治療薬)になります。空気の通り道に直接作用する方が、効果が期待出来て、全身の副作用を減らすことができます。吸入薬には空気の通り道の腫れを抑えるステロイド、空気の通り道を拡げる気管支拡張薬が含まれています。細かい粉になった薬剤を自分の呼吸の力で吸い上げるドライパウダー式とガスになった薬剤をタイミングよく吸う加圧噴霧式があります。当院では診察室で吸入器の見本をお見せして、ご本人にとって使いやすい吸入器を選んでいきます。
内服薬としてはアレルギー症状を抑える抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン拮抗薬などを使用します。
喘息以外の他のアレルギー疾患の治療も大切で、スギ花粉やダニによるアレルギー性鼻炎を持っている方は舌下免疫療法をお勧めします。
2年間発作や症状がなければ治療を止めていいとされていますが、症状がない方は病院から足が遠のいてしまいますし、通ってくださる方は2年間無症状をなかなかクリアできません。吸入薬は正直「値段が高い」ですので、喘息のタイプや、呼気一酸化窒素濃度による空気の通り道の炎症を調べて、できるだけ少ない治療薬、適切な治療期間を相談していきたいと思います。病院から一度足が遠のいてしまった方も、症状が再発したり、発作が起きたりした場合は受診してください。
気管支喘息の注射の治療、生物学的製剤、抗体薬
吸入薬や内服薬を使用しても症状が続く場合、発作を起こす場合、注射の治療があります。生物学的製剤、抗体薬とも呼ばれ、喘息の症状、発作の原因となる物質を減らしたり、機能しなくしたりします。具体的にはIgE、IL-4/13、IL-5、TSLPに対する抗体薬があり、血液検査の値や呼気一酸化窒素濃度から最適な薬剤を選択します。5種類の薬剤があり、2週間ごと、4週間ごと、8週間ごとと注射の間隔が異なり、ほとんどの薬剤で希望すれば自宅での注射が可能です。抗体薬は作用させたい場所にピンポイントで作用し、作用させたくない場所には影響しにくいのが特徴です。こちらから案内することもありますし、喘息で治療を受けていて話を聞いてみたい場合はお伝えください。院長は5種類の薬剤すべてで多くの処方経験があり、有効性、副作用、費用について診察のときにご説明します。
気管支喘息と生活環境
お薬の治療以外に、自宅や職場の環境を調整することも大切です。問診や血液検査から喘息の症状や発作を引き起こす原因が分かった場合、触れない、吸わない工夫が必要です。部屋や寝具の掃除の仕方、季節ごとに気をつけた方が良いこと、ペットとの付き合い方など、環境再生保全機構のホームページに詳しく載っています。参考にしてください。診察室でも相談にのりますので、生活環境で気になることがあればお伝えください。https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/