- 2026年9月29日
肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)

出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou03/)
9月24日-30日は結核・呼吸器感染症予防週間及び非結核性抗酸菌症啓発週間です。今回は肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)をテーマに解説したいと思います。
前回のブログ記事である気管支拡張症と関連の深い疾患であり、気管支拡張症があって肺NTM症になる場合もあれば、肺NTM症により気管支拡張症が悪化することもあります。
非結核性抗酸菌とは名前の通り、抗酸菌という細菌の仲間で結核ではないものの総称です。結核菌が人から人に感染するのに対して、非結核性抗酸菌は人から人へは感染しません。土壌に含まれる菌であり、家屋内ではお風呂やシャワーヘッドのぬめりに含まれます。また、多くの人の口の中に住み着いている菌でもあります。
長引く咳、痰で見つかることもあれば、健康診断のレントゲン、胸部CTで見つかることもあります。有病率は人口10万人あたり210.2と推定されています。高血圧症が10万人あたり40000人、喘息が10万にあたり5000人ですので、比較的稀な病気ですが呼吸器専門医の肌感覚としては年々増加している印象です。
胸部レントゲンや胸部CTを撮影することが病気を疑う上で重要で、菌を見つけることが確定診断に繋がります。喀痰で2回NTMが認められた、もしくは気管支鏡というカメラの検査で1回NTMが認められた場合に肺NTM症と診断されます。病気の最初の段階では喀痰の症状がない場合もありますので、血液検査で抗MAC抗体を調べることが補助的な診断となります。
ほとんどの病気は見つかったら治療をしますが、肺NTM症ではおおよそ半数の患者さんで経過観察(慎重に様子をみる)が選択されます。韓国で行われた研究では551人の肺NTM症患者のうち約4年間の間に進行せず治療を受けなかった患者が41.4%、そのうち喀痰から菌が認められなくなった患者が52.2%でした。経過観察と言ってもじっとしているわけでなく、3ヶ月に1回症状を伺い、胸部レントゲンや喀痰の検査を行います。
症状がある方、胸部レントゲン、胸部CTで特徴的な所見や経時的な悪化のある方、喀痰で菌量が多い方が治療の対象となります。3種類の抗菌薬を約2年間内服するのが標準的な治療で、副作用を見ながら定期的な血液検査、診察が必要になります。完全に治るというのが難しい病気で、治療終了後も経過観察が必要になります。難治例や再発例では抗菌薬を口から吸入するアリケイスという薬剤が適応になる場合もあります。
当院では3週間以上咳、痰が続く患者さんにはご本人の意向を伺ったうえで、胸部レントゲン検査を行っております。そして気管支拡張症や肺NTM症が疑わしい患者さんでは連携病院で胸部CTを施行しております。肺NTM症がご心配な方はご相談ください。治療や気管支鏡検査が必要な患者さんは連携病院にご紹介していますが、経過観察は当院でも行っております。
参考文献
Kim BG, et al. J Clin Med. 2023;12(22):7125.
Kekkaku. 2023;98(5):173.